「行政書士法の一部を改正する法律」(令和元年12月4日・法律第61号)の成立について

日本行政書士会連合会
会長 常住  豊

 

 このたび、「行政書士法の一部を改正する法律」が、第200回国会(臨時会)における衆議院本会議(11月21日開催)及び参議院本会議(11月27日開催)において、両院とも全会一致の可決により成立し、令和元年12月4日に公布されました。改正法の施行は、公布の日から1年6か月後とされています。 
 今回の改正は、近時の行政書士制度を取り巻く状況を踏まえ、行政書士の業務の安定性を確保し、国民に対するより質の高いサービスの提供を確保する観点から、所要の措置が講じられたものです。改正の概要は、①法律の目的に「国民の権利利益の実現に資すること」を明記すること、②社員が一人の行政書士法人の設立等を許容すること、③行政書士会による注意勧告に関する規定を新設することの3点となっております。
 一点目の目的規定については、今回の改正により「この法律は、行政書士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もつて国民の権利利益の実現に資することを目的とする。」とされます。これは、平成26年の行政書士法改正により特定行政書士に行政不服審査の手続代理権が付与されたほか、成年後見制度における専門職後見人など、行政書士の業務が多様化しており、その多様な業務が国民の皆様の公法上及び私法上の権利利益に関わるものであることに鑑みて、行政書士法の目的をより実態に即したものとする必要性からなされたものです。国民の皆様におかれましては、行政書士制度の社会的な役割のご理解を深めていただければ幸甚です。同時に、会員各位におかれましては、改めて行政書士としての責務を認識し、この目的を常に心に置いて業務に励んでいただければと思います。
 二点目の一人法人の許容については、これまで行政書士法人の設立には行政書士である社員が二人以上いることが必要であったところ、会員からの法人事務所の運営に関する多様なニーズに応えるものとして、社員が一人のみでも行政書士法人を設立することが可能となります。
 三点目の行政書士会による注意勧告権の新設については、行政書士会による自主的な規律の維持のための指導権限に具体的な法的根拠が与えられるものであり、会員による違反行為の未然防止に資するものです。これにより、国民の皆様から行政書士に対するより高い信頼をいただくことに繋がるものと考えます。
 

 以上を踏まえ、今後、当会としては、改正法の施行に向けて会則や規則等の整備を図るなど、必要な措置を講じてまいります。
 最後になりましたが、今回の行政書士法改正は、国会議員の先生方を始めとした多くの皆様のご理解とご協力、多大なるご支援を賜りなし得たものであります。この場をお借りして、ご尽力賜りました皆様に対しあらためて深謝申し上げます。
 今後も会員一丸となって、これまで以上に国民の皆様からの信頼に応えられるよう行政書士制度を全力で推進してまいりますので、引き続きご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

以上