日本行政書士会連合会
会長 北山孝次
東日本大震災災害対策本部
本部長 北山孝次

 東日本大震災では、特に被害の大きかった岩手、宮城、福島の東北3県の被災者は今なお避難所生活を余儀なくされています。
 当会では、被災者の生活支援策として東京会と協同で電話無料相談「行政書士会災害相談センター」を開設し、今後の暮らしや事業の悩み事の相談に応じているところですが、同様の電話無料相談は、東北の被災3県でも行われており、さらには被災県外に避難された避難先の自治体でも被災者を対象に電話無料相談の開設や無料相談会が行われています。これらの相談活動を継続しつつ、様々な行政協力、政策提言、義援金の募集などを行い、公共的使命を果たしてまいる所存です。

I  行政手続等に関する救済策・緩和策の提言

1.総務省行政管理局への「申入書」
 当会では、これまで総務省行政管理局行政手続・制度調査室宛に「申入書」を提出し、被災者の行政手続等における権利利益の保全や行政機関の機能補助について支援・協力することを鮮明にしてまいりました。
 政府は政令を出し、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律に基づき、許認可等に係る有効期限延長措置を講ずる具体的な権利利益について、各省から漸次告示が出されるなど迅速な措置が講じられました。

2.法務省入国管理局への緊急要望
 外国人の入国・在留手続等について早急に特別の措置が必要と考え、「東北地方太平洋沖地震により多大な被害を受けた地域における出入国管理行政の特例措置について(緊急要望)」を提出し、(1)在留期間の伸長等について、(2)申請の受理要件について、(3)審査及び処分等について、(4)管轄の特例措置について、(5)特例措置の範囲の拡大について、(6)退去強制手続等についてを要望しました。結果、在留期間の延長等の出入国の管理上の措置等についてが講じられたところです。

II  行政書士、行政書士会が関与する被災者支援策

1.東北3県の視察と県庁での協議
 被災の大きい福島、宮城、岩手の3県に出向き各県庁を訪問しました。その際、「行政書士、行政書士会が関与する被災者支援策」をお示しし、意見交換を行いました。その内容は、(1)入管・国籍関係業務・受付業務への会員派遣、(2)土地、建物の賃貸借に関する相談業務での会員の派遣、(3)戸籍法、住民基本台帳に関する相談業務での行政協力、(4)被災自動車の抹消登録等に係る支援、(5)許認可等各種行政手続に関する相談業務において各自治体への会員を派遣する用意があることを伝えました。

2.行政書士会災害相談センターの開設
 当会では東京会と協同で4月11日に行政書士会災害相談センターを開設し、被災に係る今後の暮らしや事業の悩み事について相談に応じております。具体的には、(1)被災賃貸物件に係る権利義務問題、(2)一時帰国の再入国手続、勤務先廃業に係る在留資格変更等の外国人の在留問題、(3)被災自動車の抹消登録、新規取得のための新車新規登録等の自動車問題、(4)住民票、戸籍に関する諸問題について被災者からの相談に応じています。
 このような被災者支援の無料相談は、当会のみならず被災地である岩手・宮城・福島・茨城・千葉・長野会で行われており、被災者が避難している新潟・広島会でも行われています。

3.福島会、宮城会における被災者の支援活動
 さて、福島県行政書士会ではこのような無料手続相談にとどまらず、被災者の負担軽減を図るため 滅失または使用不要になった自動車の抹消登録等手続を無報酬で行っています。東日本大震災での被災車両は40万台を数えるといわれております。この無料手続では、一時抹消登録手数料及び依頼者への郵送代金も会の負担で行うもので、県外に避難された方々からも多数問い合わせが寄せられており、当該手続については被災者はもとより運輸支局、軽自動車検査協会、市町村からも大変感謝されている状況です。
 この抹消登録等手続を無報酬で行うことは宮城会でも行われています。ただ、宮城会では被災車両が隣接県に比べ圧倒的に多いところから、手続料、郵送料は実費負担としております。
 当会では、福島会、宮城会の行っている被災者支援事業を後押しするため、5月13日民主党議員推進連盟の関係者を訪問し、解体・滅失等の届け出を行った軽自動車の解体・代替自動車購入等の手続における検査記録事項等証明書発行に要する手数料の無料化、原発事故による避難指定区域内の自動車に係る一時抹消登録申請に要する手数料の免除措置、被災者との行政手続に係る書類の郵送にかかる郵便料金の免除を陳情してまいりました。
 また、自動車重量税の還付が打ち出されたところから、永久抹消と同時に行う重量税還付申請も無料で行っています。

III  原発事故で避難された方々への新たな対応

 津波による福島第一原子力発電所の事故でははっきりとした収束の見込みが立たない中で、避難された方々は帰宅時期も不明という不安を抱えたまま避難生活を余儀なくされています。原子力発電所の事故でこれまで様々な措置が講じられてきました。さらには錯綜する東京電力、原子力保安院、政府の公表情報は、避難者のみならず国民の不安も増大しています。政府はまずは正確な情報把握に努めるとともに情報集積・発信の窓口の一本化を図り、原発事故に関する情報を小出しにせず、情報開示を徹底すべきだと思います。保有するすべての情報の開示を通して国民の不安感を払拭し、避難者をはじめとして国民生活の安定化を図る必要があると考えます。

 これまでの当会と行政書士会の東日本大震災への取り組みを紹介するとともに、これからの取り組み、特に政府の対応について日本行政書士会連合会の会長として所感を述べました。
 一日も早く復興がなされることを願ってやみません。

以上